03) 医大での診断
診察をしてくれたM先生は、とても優しい方だった。
当然結果としては、個人病院で渡されたエコー写真と、医大のエコー診断から
変わるものではなく、首のむくみは厚いものであった。
しかし、医大ではもう少し踏み込んだ話をしてくれた。
「首の後ろに厚みがあると、ダウン症の可能性が高まることは間違いありません。」
先生は、(海外のデータですが)と前置きをしてくれた上で一つのグラフを見せてくれた。
「首の後ろの厚みが大きいほど、ダウン症児が生まれてくる可能性が高まっていきます。
ただし、厳密に何ミリと計るのは難しいので、確実なことは言えません。」
なるほど、そのグラフで見る限り、私たちの胎児は4~5mm程度の厚さと考えられ、
ダウン症の可能性は大きく高まっているのが読み取れた。
「ただし、高まるというデータがあるのであって、確実にダウン症とは言えません。
本当にそうかどうかを知るためには羊水検査で調べるしかありませんね。」
先生の診察時間は1時間を超えていたが、この日の結論として、生死を問う問題
ではなく、現状では病院としてできることは何もない。しかし、今後どうしていくか
の話があり、私たちは黙って聞くしかなかった。
この日以降、「もやもや」とした気持ちをもちながら生活して行くことになったのは
間違いなかった。
最後にM先生はこんなことをおっしゃった。
「私たちが最後まで診ますから一緒にがんばっていきましょう。」
私にとってこの言葉の意味は、「生まれる子が大変な重い病気をもってくるけれど
しっかり見ていきましょうね」という言葉に聞こえてならなかった。しかしながら、
この時の私たちにとって、心強いものであったことは間違いない。それに、
エコー画像の子供は間違いなく人間の形をして生きているのだ。自分の感情だけで
言えば、手放しで喜べる結果ではなかったが、高まる確率の中で、どのように受け
止めて、どのように対応していけばよいのか整理がつかず、しばらくの間は自分でも
「ぼー」っとする日が多かった。
皮肉なものだが、個人病院で頸部浮腫が発覚したエコー写真が、妊娠期間中で
もっともきれいな画像であったのではないかと、後日見直すことがあった。
この時は7月。はながうちにきたのは4月の終わり。妊娠が発覚する前に来たけれど、
はなのおかげでつらい思いのときも乗り越えられた。それだけは間違いない。
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