02) 個人病院にて・・・12週
待望の子を授かって12週目。
普通の妊婦健診だった。
「紹介状を書きますからすぐに大きな病院で診てもらってください」
という個人病院の院長のことば。
わたしたちに状況を説明し、医大にもアポをとっている。
3時間後に医大の先生が診てくれることになった。
「首のうしろにむくみがあります。」
それがどういう状況かもよくわからず、「リンパが・・・」とかいろいろ
言われたが、頭の中が真っ白になった私たちにとって、医大行きを命じられた
瞬間に全てが終わったような気持ちにしかなれなかった。
胎児の状態にかかわることはすべて報告してもらうことにしているため
教えてくれたのかもしれないが、通称 頸部浮腫(NT)と呼ばれるこの
状態は本当に伝えてよいのかどうかは、わたしたちもよくわからない。
たしかに、むくみの厚みによってダウン症の確率が大幅に上がると
言われているが、それでも条件によっては生まれてこない確率の方が
断然高い。つまりは安易に伝えることによって、健常児を妊娠している妊婦の
精神的動揺をもたらすこともありえるのだ。
個人病院を出てからというもの、妻は泣いていた。
あとで妻に言われたことだが、この段階で90%だめだと思っていたらしい。
医大の先生に診てもらうまでの3時間は生きた心地がしなかった。
昼時でもあり、医大の食堂で食事を取ることにしたが、
妻と食べた食事で後にも先にも、これほどまずいと感じた食事はない。
食堂の料理が美味しくないのではなく、心が全てを受け付けなかったのである。
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